遺産相続が開始し、亡くなった方が遺言書を残していなかった場合、相続財産は、民法に定められた法定相続分にしたがって相続人全員の共有財産となりますが、個々の財産を具体的に「誰が」「どんな割合で」相続するかを決めることを遺産分割といいます。
遺産相続が開始し、亡くなった方が遺言書を残していなかった場合、相続財産は、民法に定められた法定相続分にしたがって相続人全員の共有財産となりますので、遺産分割は必ず行わなければならないというものではありません。
しかし、例えば、遺産相続の結果、共有となった建物が老朽化してリフォーム工事や建て替えが必要になった場合や、共有となった不動産を売却しようとした場合、共有者の一部の人が反対するとそれらを行うことができなくなるほか、共有者の一部の人にさらに相続が発生すると、次第に権利関係が複雑になっていくなど、共有関係ならではの面倒は少なくありません。
遺産相続にあたっては、その後の権利関係も考慮して、遺産分割が必要かどうかをご検討ください。
遺産分割をいつまでにしなければならないという法律上の期限はありません。
ただ、自分の相続した財産を処分できなかったり、誰が財産を管理するのかといった問題が起こる可能性もあり、できるだけ速やかに不安定な権利関係を解消することが望ましいでしょう。
また、遺産分割を伴う相続について、相続税の申告義務のある方は、相続税の申告期限(被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内)までに遺産分割が終了していない場合には、未分割での申告となり、配偶者の税額軽減や小規模宅地の評価減などの相続税の軽減特例の適用が受けられなくなります(その後3年以内に協議が成立した場合には訂正・還付の機会があります。)のでご注意ください。
亡くなった方が遺言によって相続人間の遺産分割の方法を指定した場合です。
このような遺言書がある場合には、遺言書に書かれた内容にしたがって遺産を分割します。
相続人全員の参加により遺産分割の方法を協議する場合です。
遺言による指定がない場合に行われる一般的な遺産分割であり、協議で決まった内容にしたがって遺産を分割します。
相続人間で遺産分割協議を行ったが話し合いがまとまらなかった場合、家庭裁判所に申し立てて、一般市民から選ばれた調停委員という第三者が話し合いに関与することにより、遺産分割の合意を成立させる場合です。
遺産分割調停が成立すると調停調書が作成され、そこに記載された内容にしたがって遺産を分割します。
なお、調停が成立しなかった場合には、遺産分割の審判に移行します。
「不動産は妻」「預貯金は長男」「株式は二男」というように、文字どおり遺産を物理的に分割する方法
遺産を売却して得た代金を分割する方法
遺産は特定の相続人が取得し、代わりに他の相続人に金銭を支払う方法
遺産分割協議の内容を書面にしておかなければならないという法律上の義務はありませんが、あとでトラブルが起こるのを防ぐため、また、不動産や預貯金口座の名義変更手続きには遺産分割協議書が必要な場面がありますので、協議の内容は必ず書面にして残しておきましょう。